inserted by FC2 system Every Day

夏祭り


「うう〜、なんで俺だけこんな格好しなきゃいけないんだよー」
夏休みのある日、竜紀達4人は集まることになった。
今日は夏祭りだ。
いつもの夏祭りなら竜紀も喜んで出かけていただろう。しかし、今日は表情が暗い。
涙目で3人に訴える。
「似合うよ、竜紀〜」
飛鳥がクスクスと笑いながら言う。
(絶対面白がってるだろ!?)
竜紀は心の中で悪態をついた。
竜紀がどんな格好をしているのかというと、祭りの時だけの特別な格好と言えば分かるだろうか。
そう浴衣である。
しかし、普通の浴衣ではない。
女の子用の浴衣だ。
白地に金魚の模様が入っていて、とても可愛らしい。それに合わせて帯が赤い色だ。
そして髪には、赤い飾りのついたピンを付けている。
お世辞じゃないが、一見女の子かと見間違う竜紀だけに似合っていた。
竜紀が動くたびに髪についたピンの飾りがゆらゆらと泳ぐ。
そんな竜紀とは正反対に他の三人は私服姿だった。


とりあえず一行は祭りを楽しむことにした。
歩きながら、かき氷を食べる。
舌がかき氷の色に染まったのを見せ合ったりしてふざけていた。
食べ終わると、焼きとうもろこしや綿菓子を買って食べる。
四人の肩には、四神がちょこんと乗っている。
その中の一匹である青龍のセイがつぶやいた。
「祭りというのは食べるだけなのか?」
「ううん、金魚すくいや花火大会もあるよ。もうすぐだよね、花火」
最後の方は虎ノ介に話しかける竜紀。
「そうだな、8時からだからあと15分といったところだな」
虎ノ介が頷き、腕時計を見ながら教えてくれる。
「じゃあ、もうそろそろ川に行こうか?」
続いて勇亀也が提案する。
花火は、花火師が川にある船から打ち上げるのだ。
毎年この河川には、どこから集まったのか花火を打ち上げる時には人でいっぱいになる。
河川に移動した四人は、河川の斜面に座って始まるのを待った。
他にも沢山の人が河川に集まっている。
浴衣を来た女の子達が楽しそうに会話をしていた。
「・・・飛鳥も浴衣着れば良かったのに」
ボーと女の子達を見ながら竜紀がつぶやいた。
「え?」
飛鳥が何?と竜紀の顔を見る。竜紀は振り向いて
「可愛いんだから絶対似合うのに」
と恥ずかしげもなく、そう言った。
その言葉に、飛鳥の顔がカアッと赤くなる。
「ばっ、ばか!何言ってんの!?」
そう言うと飛鳥はふいっと、そっぽを向いてしまった。
「え?おーい、飛鳥ー?」
竜紀は(うわ!怒らせちゃった!?)と焦る。

そんな二人の微笑ましい光景を見ながら、虎ノ介と勇亀也は、お互いははは・・・と笑うしかない。
そして花火が始まると、四人と四匹でまたはしゃぎ始めた。
「わー、綺麗ですね!ご主人様!」 
四神の朱雀であるスーちゃんが叫ぶ。
「うん、綺麗だね〜」
飛鳥もそれに答えながらキラキラした目で空を見上げていた。



夏休みのある日の出来事。
竜紀は、さっきの飛鳥の態度が分からず悩んでいるようだったが、そんなことにはおかまい無しに花火は進んでいくのであった。
 …end.



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■あとがき

 花とゆめ喜多尚江さんの作品「ぐるり」より。

この話は漫画描いたら楽しそうだなと思います。
もちろん小説書くのも楽しかったですよ。
喜多尚江さん熱が皆さんにも広がると良いな〜(笑
                    2010/7/15



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